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古代史を中心にした漂流記録&覚えておきたい記事、書籍、ニュースなどの備忘録として、あるいは自分の考えの足跡、生活の記録をしています。


by jumgon
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鉄の古語

鉄を表わす古語
真弓常忠氏の「古代の鉄と神々」のなかに面白い記事があるので書き停めます。(一部改変省略)

鉄の古語には次ぎの種類がある。
①テツ、タタラ、タタール、韃靼
②サヒ、サビ、サム、ソホ、ソブ
③サナ、サヌ、サニ、シノ、シナ
④ニフ、ニブ、ニビ、ネウ
⑤ヒシ、ヘシ、ベシ、ペシ

①テツの語群
テツ(鉄)は、ヒッタイト民族が鉄をもって築いた強大な王国トルコの名に由来することは広く知られている。
◎わたしは知らなかったよ~
このヒッタイトの創始した製鉄技術は、シルクロードを経由して紀元前13世紀頃の殷代の中国に入ったとされている。
殷・周代は中国では青銅器文化が発達したが、鉄は戦国時代に武器として用いられ、漢代には鉄は国の管理下におかれた。
このトルコ、タタール、、韃靼に発した製鉄技術がタタラにほかならない。
タクタク、タツタツともいい、鉄の語源ともなった。
わが国では北方大陸系文化としてもたらされたものである。

②サヒの語群
ヤマタノオロチ退治のときスサノヲノミコトが使用された剣を「韓鋤剣」(カラサヒノツルギ)といい、鋤持神」(サヒモトノカミ)という。

*蛇の韓鋤の剣は蛇の麁正はとも呼ばれ、岩波文庫版「日本書紀」の註によれば、aramasa(麁正)とkaramasafi(韓鋤)は同根であって、「韓鋤(からさひ)」の「サヒ」とは、日本では小刀または刀の意。従って、韓から伝来した刀という意味ではないかと説明している。
サヒはサブ、サビ、サムとも転化し、寒川・寒田、寒河江・祖父江の地名もこれに由来する。
賽神(サイノカミ)というのも本来はサヒ(鉄)の神の意であった。
サヒ、サビ、サム、ソホ、ソブ等、この語類のサ行音は、元来砂、小石を意味する言葉で、砂鉄が精錬されて鉄となり普通の砂や石と違った貴重な性質を帯びることから、サ・シ・ソの一音だけでも鉄を意味することになった。
日向の襲の国(ソノクニ)、熊襲(クマソ)のソもやはり鉄の産地を意味した。

③サナ、サヌ、サニ、シノ、シナ
福士幸次郎はサナ、サヌ、サニ、シノ、シナ等の語源を追い求めた末、サナとは果実の核の部分を意味し、カナサナ(金讃)とは外皮を鉄でまとった果物や穀物の如き形状のもの、即ち鈴・鐸(サナギ)のことであるとした。
◎褐鉄鉱の鳴石ってまさしくそれね!⇒「唐古・鍵遺跡ミュージアム」
唐古・鍵遺跡ミュージアムへ行った時それに出会いました。それは褐鉄鉱の鈴を割って、中に翡翠の勾玉が入れてありました。鈴石だけでも貴重なのにその不思議な自然の力にプラス、自分の宝物を入れたのですね!銅鐸の起源かもしれませんね。

*鈴石(鳴石)について
褐鉄鉱は、良質な粘土の周辺に鉄分が凝縮して生成された自然の好物です。
褐鉄鉱の内部の粘土は乾燥収縮し、それが内壁にあたって音をたてる為、江戸時代の好事家の間では「鳴石」や「鈴石」として珍重されていたという。振ると鈴みたいな音がする。

奇石博物館にある、鈴石(鳴石)
奈良県生駒郡平群町産(割れ口の見える2個)
京都府相良郡和束町産(割れてない1個)
鉄の古語_f0215268_14101436.jpg


④ニフ、ニブ、ニビ、ニホ
「ニフ」(丹生)は通常、朱砂(辰砂)の産する地につけられた名と考えられている。
しかし井塚政義氏の教示によると古代には硫化水銀を「朱」、四塩化鉛を「丹」、褐鉄鉱・赤鉄鉱・酸化鉄を「赭」にそれぞれ区分しながらも、これらを一括して「丹」とよんだ由で、丹生の地は鉄産地をも意味したという。
◎フーン、そんなに細かく区別表現していたのか~
丹生より派生した「ニブ」(二部・鉗)「ミブ」(壬生)・「ニビ」(鉗)や「ネウ」(根雨)もそれである。

⑤ヒシ・ヘシヒシ・ヘシは「和名抄」によると、鉄鏃を意味し、棹の先に装着した鉄片である。
この語から派生した「鉄の川」がイヒシ(飯石)川、イビ(揖斐)川であるとしたのも
福士幸次郎である。
ヒシ・ヘシの語が南方系海洋民の鉄・鉄斧を意味するという情報もある。
ベシ・ヘシの語によって表象される古代鉄文化は南方系海洋民によって運ばれ、琉球弧を北上して九州から朝鮮半島西岸、山東半島まで達していたと想像できる。

古代鉄を表わす語が色んな系統に分かれているのですね。
鉄の渡来には様々な民族、ルートがあるのでしょう。

◎そういえば日本語の数詞に「いち・に・さん」と「ひぃ・ふう・みぃ」(ひとつ・ふたつ・みつ)の二系統がありますが、これも日本列島へ流入した民族の違いを表わしているような気がします。
by jumgon | 2010-12-03 14:27 | ★日本の鉄の歴史