「橡」とは
2011年 01月 28日
で引用した文について追加改稿
『萬葉集』(巻第七)には次のような歌が収められています。
「橡の 解き洗ひ衣の 怪しくも ことに着欲しき この夕かも」です。
この中の「解き洗ひ衣」は、まさに着物の洗い張りを示しているといわれています。橡で染められた着物を身に着けていたのは庶民ですから、洗い張りはすでに奈良時代から庶民の生活に溶け込んでいたようです。
前回引用した歌はこれでしたね。
私はここにでてくる「橡」の読みがわからなかったのでふりがなを入れませんでした。
調べているうち、二通りの答が出てきた。
①とち(栃)の木
②くぬぎ
どちらも「橡」とも書くそうだ。
万葉時代ではどちらのことを指していたのだろう?
調べているうち、決定打が見つかった。
「紅(くれない)は 移ろふものそ
橡(つるばみ)の
馴れにし衣に
なほ及(し)かめやも」
大伴家持 万葉集
◎紅は色が変わりやすいが、橡染めは変化しにくいからこちらのほうが、まさっている。
(これは私の解釈です。間違っているかも知れません。
一般的に草木染は化学染料に比べ色の安定性に欠ける。
もうひとつ
「橡(つるばみ)の 衣(きぬ)は
人皆(ひとみな) 事無しと
いひし時より
着欲しく念(おも)ほゆ」
万葉集
橡(つるばみ)= くぬぎ
クヌギはブナ科コナラ属の落葉樹のひとつ。新緑・紅葉がきれい。クヌギの語源は国木(くにき)または食之木(くのき)からという説がある。
古名はつるばみ。漢字では櫟、椚、橡などと表記する
くぬぎの葉
くぬぎの花
くぬぎのドングリ
このもじゃもじゃしたのが付いてるドングリ、よく見かける。
これがクヌギのドングリだったのか~
実は爪楊枝を刺して独楽にするなど子供の玩具として利用される。
また、縄文時代の遺跡からクヌギの実が土器などともに発掘されたことから、灰汁抜きをして食べたと考えられている。
樹皮やドングリの殻は、つるばみ染めの染料として用いられる。
つるばみ染めは媒染剤として鉄を加え、染め上がりは黒から紺色になる。
前稿は追加加筆しておきます。